親が施設に入る前に考えることは何か?不動産売却の進め方と家族で決めたい判断基準の画像

親が施設に入る前に考えることは何か?不動産売却の進め方と家族で決めたい判断基準

ノウハウ

井上 大輔

筆者 井上 大輔

不動産キャリア5年

吹田市出身、吹田市在住。宅地建物取引士として18年、2級建築士、2級建築施工管理技士として35年、数々の新築・リノベーション・リフォーム現場での工事に携わる。

親が介護施設や老人ホームへ入居する話が現実味を帯びてくると、実家をどうするかという問題が一気に浮かび上がります。
親の生活や介護を優先したい一方で、施設費用や将来の相続を考えると、不動産売却を無視することはできません。
とはいえ、どのタイミングで何から手を付ければ良いのか分からず、不安だけが先立つ方も多いはずです。
この記事では、親が施設に入る前に考えることを、親の気持ち・お金の整理・家族の話し合いという視点から整理し、実家売却の基本ルールや判断ポイントを分かりやすく解説します。
読み進めることで、慌てずに準備を進め、親にとっても家族にとっても納得できる選択を見つけるヒントになるはずです。

親が施設に入る前に整理したい3つの視点

まず意識しておきたいのは、親御さん自身の気持ちと意思をきちんと確認することです。
内閣府の高齢者調査でも、多くの高齢者が住み慣れた自宅への愛着を持ちつつ、将来の介護や住まいに不安を感じています。
そのため、実家を手放すことに抵抗がないか、別の住まいへ住み替えたい希望があるか、不動産売却そのものをどう考えているのかを、時間をかけて聞き取る姿勢が大切です。
意思確認を丁寧に行うことで、後になって「自分の気持ちが聞かれなかった」という不信感や家族間のしこりを減らすことにつながります。

次に整理したいのは、施設費用や生活費と、親御さんの資産全体とのバランスです。
民間調査では、入居型介護施設の入居一時金は平均で数十万円、月額費用は約20万円台という結果が報告されています。
一方で、内閣府の経済生活調査では、高齢者の多くが「介護費用や老後の生活資金への不安」を抱えていることが示されており、年金収入だけでは将来の支出を十分に賄えないと感じる人も少なくありません。
年金、預貯金、不動産などを一覧にして、施設入居後も無理のない生活が続けられるか、不動産売却でどの程度の資金確保が必要かを、家族で冷静に見通しておくことが重要です。

さらに大切なのが、家族間の温度差や役割分担を早い段階で整理することです。
高齢者の不動産取引では、内容をよく理解しないまま契約してしまい、後からトラブルになる事例も報告されているため、誰が窓口となって情報を集め、誰が契約内容を確認するのかを明確にしておく必要があります。
また、きょうだいの中で介護負担や費用負担の受け止め方が異なると、不動産売却や施設選びを巡って感情的な対立が生じやすくなります。
そのため、早めに全員で顔を合わせ、親御さんの希望、資金計画、今後の手続きの流れを共有し、記録を残しながら合意形成を図ることが、争いを防ぐうえで大きな助けとなります。

整理したい視点 確認する主な内容 家族で決めたいこと
親の気持ちと意思 住み替え希望や実家への思い 売却か保有かの基本方針
資産と費用の全体像 年金収入と預貯金、不動産 施設費用に充てる財源の役割
家族間の役割分担 情報収集や手続きの担当 負担の分け方と合意形成方法

親が施設に入る前に知る「実家売却」の基本ルール

親名義の家を売却する場合、まず重要になるのは「登記名義」と「本人の意思能力」です。
登記簿上の所有者が親であれば、原則として売買契約に署名押印するのも親本人であり、子どもだけの判断では売却できません。
さらに、高齢になると判断能力が低下することがあり、売買条件を理解して自分の意思で決められるかどうかが、不動産会社や司法書士などから慎重に確認されます。
この前提を踏まえたうえで、どの時期にどのような方法を選ぶかを整理しておくことが大切です。

親が元気なうちであれば、生前贈与や家族信託、任意後見契約など、将来の売却や管理方法を事前に決めておく選択肢があります。
たとえば生前贈与では、不動産を子ども名義に移すことで、将来の売却手続きや相続人間の調整をしやすくできる一方、贈与税や登録免許税などの負担にも注意が必要です。
家族信託では、親が元気なうちに信頼できる家族を受託者とし、自宅を信託財産として管理・処分の権限を託すことで、親の生活費や介護費に充てる仕組みを設計できます。
任意後見契約は、公正証書で将来の代理人を決めておく制度であり、判断能力が低下した時点から代理権が発効する点が特徴です。

一方で、認知症の発症などにより、親が自分で契約内容を理解・判断できない状態になると、成年後見制度の利用が必要となる場合があります。
法定後見が開始されると、家庭裁判所が選任した成年後見人等が財産管理や法律行為を代わって行いますが、本人の居住用不動産を売却する際には、民法の定めにより事前に家庭裁判所の許可が求められます。
この許可申立てでは、売却の必要性や代金の使途、代替住居の確保状況などが詳細に確認され、本人の生活や利益を損なわないかどうかが重視されます。
したがって、親の判断能力の変化を見越し、どの段階でどの制度を利用するのかを早めに検討しておくことが、スムーズな実家売却につながります。

場面 主な制度・方法 確認したいポイント
親が元気な段階 生前贈与・家族信託 税負担・家族の合意
判断能力が低下前 任意後見契約の準備 将来の代理人の人選
認知症発症後 成年後見制度の利用 家庭裁判所の許可要否

親が施設に入る方が押さえたい不動産売却の判断ポイント

まず意識したいのは、売却・賃貸・保有のいずれを選んでも、必ず費用と手間が発生するという点です。
売却は固定資産税や維持費の負担を早期に整理しやすい一方で、相場より安く手放したと感じる可能性があります。
賃貸は家賃収入が期待できますが、入居者募集や修繕対応など継続的な管理が欠かせません。
保有を続ける場合も、将来子ども世代が利用する見込みや、空き家となる可能性を冷静に比べて考えることが大切です。

次に、売却のタイミングと税金の関係をおおまかに押さえておくと判断しやすくなります。
一定の条件を満たす居住用の自宅を売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があり、課税額が大きく変わることがあります。
また、譲渡所得は売却価格から取得費や売却にかかった費用を差し引いて計算され、その金額に税率が掛けられます。
所有期間が5年を超えるかどうかで税率区分が変わるため、親が住まなくなってから早めに方向性を確認しておくと安心です。

一方で、施設入居後も実家を空き家のまま放置すると、思わぬ負担につながるおそれがあります。
誰も住んでいない家であっても固定資産税や都市計画税は原則としてかかり続け、庭木の繁茂や外壁の傷みが近隣トラブルを招くこともあります。
さらに、倒壊や衛生面で問題があるなど「管理不全」と判断されると、行政から指導や勧告を受ける可能性も否定できません。
このため、親が施設に入ることが決まった段階で、将来の利用予定と管理方法、資金負担の分担を家族で具体的に話し合っておくことが重要です。

選択肢 主なメリット 主なデメリット
売却 維持費負担の早期解消 思い出の住まい喪失
賃貸 家賃収入による資金確保 入居者対応と修繕負担
保有 将来利用の柔軟な選択 固定資産税と空き家リスク

親が施設に入る前に家族で話し合い・専門家へ相談する流れ

まずは、親が施設に入る方と家族の間で、現状と希望を落ち着いて共有することが大切です。親の健康状態や今後の医療・介護の見通し、どのような暮らし方を望んでいるのかを、できるだけ具体的に言葉にして確認します。また、年金や預貯金、不動産などの資産状況を親の了承を得たうえで整理し、施設費用や将来の生活費とのバランスを家族全員で把握しておくと、不動産売却の必要性や緊急度を冷静に検討しやすくなります。こうした情報を共有しておくことで、後から家族間で認識の食い違いが生じることも防ぎやすくなります。

不動産売却を現実的な選択肢として検討する場合には、早めに必要書類と権利関係を確認しておくことが重要です。法務局で取得できる登記事項証明書は、所有者の氏名や住所、持分、抵当権などの登記内容を確認する基本資料であり、窓口のほかオンライン請求や郵送による取得も可能とされています。あわせて、本人確認書類や実印、印鑑登録証明書、固定資産税の納税通知書なども整理しておくと、売却の相談や手続きを進める際に手戻りを減らすことができます。こうした準備を少しずつ前倒しで行っておくことで、親の体調が変化した場合にも、慌てずに対応しやすくなります。

具体的な相談先としては、介護や生活全般の不安については地域包括支援センターが総合的な相談窓口となっており、公的な立場から介護保険制度の利用や今後の生活設計について助言を受けることができます。一方で、不動産の管理や空き家化のリスクについては、市区町村が設置する空き家相談窓口や、国土交通省が進める空き家対策の取組を通じて、適切な管理や活用方法について情報提供を受けることが可能です。さらに、高齢者の不動産取引に関しては、消費者庁が生活に重大な影響を及ぼすおそれがある契約トラブルへの注意喚起を行っているため、売却の勧誘を受けた際には内容をよく確認し、少しでも不安があれば公的窓口に相談する姿勢が大切です。

段階 家族で確認すること 活用したい公的窓口
初期の話し合い 親の希望と資産状況の共有 地域包括支援センター
売却準備段階 登記事項証明書と権利関係 法務局相談窓口
空き家予防段階 空き家化リスクと管理方針 市区町村の空き家相談窓口

まとめ

親が施設に入る前に考えることは、多くの家族にとって大きな決断になります。
親の気持ちや資産状況、きょうだい間の役割分担を早めに整理することで、後悔やトラブルを減らせます。
実家の売却は、名義や意思能力、税金や空き家リスクなど、事前に知っておきたいポイントが多数あります。
当社では、親の介護や施設入居を控えたご家族の不動産売却について、状況整理から売却戦略まで丁寧にサポートしています。
「何から相談していいか分からない」という段階でも構いませんので、まずはお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせはこちら

”ノウハウ”おすすめ記事

  • 定期借地権付きマンションとは何か?購入と売却の注意点を解説の画像

    定期借地権付きマンションとは何か?購入と売却の注意点を解説

    ノウハウ

  • 決済当日は何をするか不安な方へ 不動産売却の最終日を流れで解説の画像

    決済当日は何をするか不安な方へ 不動産売却の最終日を流れで解説

    ノウハウ

  • 雨漏りしたことのある家を売るときの注意点は?戸建住宅を安心して売却する方法を解説の画像

    雨漏りしたことのある家を売るときの注意点は?戸建住宅を安心して売却する方法を解説

    ノウハウ

  • セットバックとは土地の面積が減るって本当?中古戸建や土地購入前に必ず確認したいポイントの画像

    セットバックとは土地の面積が減るって本当?中古戸建や土地購入前に必ず確認したいポイント

    ノウハウ

  • 再建築不可物件とは?購入前に知るなぜ安い理由と売却判断のコツの画像

    再建築不可物件とは?購入前に知るなぜ安い理由と売却判断のコツ

    ノウハウ

  • 公簿売買と実測売買の違いは?不動産売却購入前に必ず確認しようの画像

    公簿売買と実測売買の違いは?不動産売却購入前に必ず確認しよう

    ノウハウ

もっと見る